玉城裕規インタビュー2 〜バトンでつなぐ「明日のつくり方」〜
「全国1位」の響きが羨ましかった
―東京のハンバーガーショップでアルバイトされていた経験があるとか
「俺はどうしてこんなに落ちるかね?」と思うくらい(笑)、上京して10回面接を受けて、落ちて…。唯一最後に受かったのがそのハンバーガーショップだったんです。
養成所に通いながらだったんで、朝から夕方まで、朝シフトで5年くらい働きました。
当時は髪型に苦労して。役者を目指していたので五分刈りとかっていうのも…違うじゃないですか。でもお店はチェーン店だったので、衛生上、髪が長いのはダメなんです。もみあげとか横の毛も、耳たぶより何cm上とかかなり厳しくて。
だから、安いカツラを買ってめっちゃ短く切ってかぶってました(笑)。自分の髪の毛をまとめてから、カツラをかぶって、さらにキャップをかぶるんです。
本当はダメなんですけど、かぶりもの2つしてたら髪の毛も落ちないから衛生的にもいいだろうってことで。店長にだけは正直に事情を説明して、他の人にはバレないようにしてましたね。
ただ…そのハンバーガーショップでは年に1回キッチンの人が技術を競う全国大会があるんですが、さすがにそれには出られませんでした。カツラだったので(笑)。でも僕、その店のキッチンで一番作るのが早かったんですよ。時間によっては一人でまわしていましたし。
大会に出る気はなかったんですけど、ある年、一緒に働いていたお店の子がその大会で1位を獲ったんですよねー(笑)。「全国1位」の響きってすごいじゃないですか。その時は、ちょっと羨ましかったです(笑)。
ぶわぁーってオーダーが入って、このメニュー入ったらこれやって、その間に何して…っていう構築の仕方次第ですよね。一人でまわせるかどうかは。
例えばパティがなくなってきました、エッグがなくなってきましたって時に、どういうタイミングで焼くかっていうこととか。あとはもう、手を早く動かす、移動を早くする(笑)。
そのお店はパスタも、ピザもあって、ハンバーガーの種類も結構たくさんあったんでピーク時はすごいんです。ファーストフードだから単価は高くないはずなのに、1時間の売り上げで75,000円くらい。それを1人でまわすと、もう頭がついていかなくなってくるんです。
キャップかぶってますし、ヅラかぶってますし(笑)、脳がプスプス言ってました。…結構、今でも当時の夢を見ます(笑)。
ピーク時のちょっと前ってドキドキするんですよ。どんぐらいオーダーが来るんだろうって。ある種“勝負”だと思ってたんだと思います(笑)。
自分が遅いとお客さんへの提供が遅れますし、たまにピザを窯に入れっぱなしで煙がもくもくもく…ってなった時には(笑)凹みますけど、そこをノーミスで、いかにスムーズにいかせるっていうことに、やりがいを感じていたんだと思います。ピークを乗りきったっていう達成感ですよね。
あ、あとはペペロンチーノが得意でした!美味しいペペロンチーノを作るには、ちょっとしたコツがあって…僕、ペペロンチーノには命かけてたと思います(笑)。
出会いが広がることは自分の世界が広がること
働いていて、ためにならないことってないですよね。接客の仕事ならコミュニケーション能力が鍛えられると思いますし、生きていく上では、働いた経験すべてがためになるんじゃないかと思います。
僕はキッチンでオーダーにどう応えていくのかという、段取りの構築の仕方を考えることで鍛えられました。どんなことでも、脳内で物事をどうやって構築していくかっていうのは大きいなと思うんです。
舞台でもどう動くかっていうことを常に考えますし、「このセリフでこう動いて」って言われた時にすぐ動けることって大事なんです。あの時のアルバイトの経験は、適応能力や瞬発力につながっていて、今にすごく活きてるなって感じます。
あとは、いろんな人と出会えたことで価値観も変化しました。
当時、僕は役者を目指して働いていて、そこに芸人さんを目指す方やアーティストを目指す方もいらっしゃって。お店のメンバーでよくご飯に行ったりしたんですけど、その人達と話したことっていうのはすごく勉強になったし、楽しかった。出会いが広がることは自分の世界が広がることにもなるんだなって思います。
そのためにはやっぱり、笑ってる方がいいですね。もちろん出来ないことがあったりするとイライラもしますけど、笑顔の方がお客さんにも好印象を持たれるし、何より笑っている人に人は集まると思うので。
だから、もしこれからバイトをするという人にアドバイスがあるとすれば、笑っていられられたらいいなっていうことですね。バイトも、バイトの面接でも。
…まぁ僕は、笑顔でも面接10回落ちましたけど(笑)。でも笑ってた方がいいです!絶対!
キッチンで迎えるピークの時間を“勝負”だと思っていたと語る玉城さん。自分の仕事に本気で臨んでいたからこそ、きっとお店のメンバーとも良い刺激を与え合うことができたのでしょうね。さて次回は、チャーミングな玉城さんが俳優を目指して上京した時のお話。ツッコミどころ満載です!
★次回掲載は3月9日(木)を予定。乞うご期待!
玉城裕規 Yuki Tamaki
1985年12月17日生まれ、沖縄県出身。
2011年の全労済ホールスペース・ゼロで上演された「少年ハリウッド」伊達竜之介役を好演し注目をあびる。翌年、累計発行部数は850万部を突破した渡辺航氏による週刊少年チャンピオン連載漫画の舞台「弱虫ペダル」東堂尽八役で人気を博し、舞台「ライチ☆光クラブ」ジャイボという作中で「奇人で変人」と描かれている役を演じきる。同役のテレビアニメの声も担当する。
舞台のみならず、映画では山口ヒロキ監督「Messiah メサイア-漆黒ノ章-」周康哉役で出演する。(同作品の以降のシリーズに出演する)2014年、読売新聞創刊140周年記念として辻仁成氏の初の脚本・演出作品「海峡の光」では同姓愛者の役を演じ、深作健太演出作品『里見八犬伝』や、唐々煙氏作による大ヒットコミックの舞台「曇天に笑う」主演、曇天火を演じ殺陣を披露し、幅広く演じる。
近年では、「血まみれスケバン・チェーンソー」の劇場版(山口ヒロキ監督)では怨憎役や、ホラー作家三津田信三氏の小説原作映画、三木康一郎監督「のぞきめ」の吉田鋼太郎さん演じる四十澤想一役の青年期を熱演。他、ベリーグッドマン「Eye to Eye」と、Softly「あなたのことを想って指先でなぞる文字は」という新曲2曲をモチーフにしたオリジナル純愛ストーリー『先生に恋した夏』で主演を務め話題を呼ぶ。Softly「あなたのことを想って指先でなぞる文字は」ジャケットの表紙にも起用される。2017年4月15日~舞台『里見八犬伝』館山公演からスタートします。
撮影:杉江 拓哉
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3回に渡ってお届けしてきた玉城さんのインタビュー。最終回は玉城さんが俳優を目指して上京された時のお話を伺います!最後はこのバトンが誰に渡るのかもお楽しみに。